「Tiatiaの子」の主人公・真木潔のモデルであり、筆者の父の眞下清(まっか・きよし)が11月24日午前8時44分、入院先の病院で亡くなりました。84歳でした。
悪性度の高いがんと診断され、10月24日に入院してからちょうど1カ月。83歳の妻と、私を含む3人の子、そして2人の孫に見守られながら、静かに息を引き取りました。
酸素マスクを着け口をあけて仰向けに寝ていた父。枕元には兄と私。兄の横には姉。母は少し離れた椅子に。足元あたりに孫2人。
8時半前から呼吸が途切れ途切れになり、最後に喉が動き、そして完全に止まりました。直後、側にいた兄が母に席をあけました。
「お父ちゃん、ご苦労様。お父ちゃん、ありがとう。よく頑張った。ありがとう」
60年連れ添った母は父に近寄り、立ったまま腰を屈め、まだ40度近い熱を帯びていた父の額に手を当て、頬をなで、それから動かなくなった顔におでこをつけ、何度も話しかけていました。
1948年(昭和23年)9月、13歳で北方領土・国後島から岩手県九戸村に引き揚げてきてから71年。10人のきょうだいの中で、父だけが九戸村から一度も外に住所を移したことがありません。隣の二戸市で過ごしたこの最後の1カ月が、父にとって引き揚げ以来最も長く九戸を離れた期間になりました。引揚者ではありますが、本当に九戸を愛し、九戸に生きた人でした。
11月27日に火葬、28日に葬儀。村内を中心に300人を超える方々に参列いただきました。ありがとうございました。