この物語について

※物語を最初からお読みになりたい方はプロローグ「さらば茶々山」からどうぞ

※物語を通して読める本はこちらから購入できます

 1948年8月29日、北方領土・国後島留夜別村の最後の住民が島を追われました(隣の泊村が同じ日なのかどうかは判然としません)。

 2018年8月29日は、その日から70年に当たります。

 この節目まで1年余となった2017年4月、国後島・爺爺岳の麓、留夜別村礼文磯から、一つの物語をスタートさせます。

 トッチャとカッカ、そして10人の兄弟姉妹の物語です。

 厳しくも豊かな国後の自然、一家を翻弄する戦争・抑留・引き揚げ。そして国後島から岩手県九戸村へと舞台を移し、物語は進んでいきます。

 この一家は筆者・眞下聡の祖父母、そして父とその兄弟姉妹です。そして書かれてあることは、筆者が父・眞下清など話が聞ける兄弟姉妹から数年間にわたって取材し、さらに各種資料に当たった上で、物語にしています。

 ただ記憶が曖昧で確定できないことも多く、想像で補った部分もあるため、登場人物については基本的にすべて仮名にしました。登場する「潔」のモデルである私の父・清は北方領土の記憶を伝える「語り部」にもなっていて、北海道新聞や岩手日報などにも何度か取り上げられていますから、仮名にする必要もないのですが、仮名にしてあるのはこんな事情からです。

 このストーリーを公開するのは、国後島、とりわけ留夜別村の旧島民をめぐる話がほとんど存在しないこと。そしてこれをきっかけに、写真や留夜別の記憶などが再び呼び起こされ、情報提供につながらないかと考えてのことです。

 来春までほぼ毎週1回更新、約50回の連載を予定しています。この話が終わる頃には国後島の「戦後70年」を迎えているはずです。

 爺爺岳(Tiatia)の雄大な姿に育まれ、明るく元気に育っていった「Tiatiaの子」たちの物語を、どうぞお楽しみください。最初からお読みいただく場合はプロローグ「さらば茶々山」からどうぞ。

2017年4月 眞下 聡